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合気道研心会体験談

合気道研心会の会員の皆様にお聞きした「合気道体験談」です。

一般クラス

板橋先生(六段)に聞きました

合気道歴は開祖が存命のとき(~昭和43)から今現在も、退役犬と暮らしているという方の合気道体験談です。

まえがき

板橋六段は、土曜日の朝稽古、日曜の昼の稽古に狭山台道場にやってくる、自身が運転なさる小粋なオレンジの軽自動車が鮮やかだ。天気がいい日はス ポーツタイプの自転車に跨って。六段は私が生まれる前から遠くアメリカを闊歩する、筋金入りの?のニューヨカーだ。その行動範囲は、現在も広く、国内は勿 論、海外へ合気道旅行へ。私共の前に、静かに歩んでいらっしゃる、板橋先生にお話をうかがいました。

質問と答え(合気道について)

  • 板橋六段の合気道のきっかけとはなんでしょう。
  • 3年半の外国駐留生活で、完全に体がなまってしまったことを自覚し、何か運動で補いたいと探した結果合気道を見つけました。
  • それはお幾つのときですか?
  • 1969年、37歳のときでした。
  • 合気道が「おもしろい」と感じるようになったのは、何年目または級・段、いつごろからでしょうか?
  • 運動として一番自分に合っていたのか、初めてすぐから「おもしろい」と感ずるようになりました。今でもその気持ちはずっと続いています。
  • 他格闘技、武道の稽古経験はございますか?
  • 小斈2~3年の時、剣道をやっていただけです。
  • 「合気道が人生にここまで深く関わっていくとは、始めた当時は思いにも寄らなかった」 と、仰っていたのを私は以前聞いたことがありますが、板橋六段にとって 合気道の魅力とはなんでしょう?
  • 他の武道や、スポーツと違って(と云ってもそれ程他を良く知っているわけではありませんが)人間の自然な動きを、より洗練させてゆく中で、心身を鍛える、という点が私にとって非常に魅力です。
  • 「実践的」が板橋六段の指導のテーマと、私は感じるのですが、そのスタイルが確立したのはいつ頃なのでしょうか?
  • 「実践的」というのが、どういうことか私には分かりません。「人間の自然な動きの追求」ということなら、そういうものを目指しております。
  • 開祖がご存命の頃(S43入神)、開祖の演武をご覧になったことはありますか?
  • 一度ありますが、ずっと昔s28~29の頃のことで、そのときは、何の特別な意識もありませんでした。
  • 板橋六段はの合気道のルーツ、小林道場の小林師範、畑山憲吾師範についてお聞かせ願いますか?
  • 小林師範に入門されたのはいつ頃なのでしょうか?
  • 所沢道場が、開所された翌年頃からではなかったと思います。当時は入門届というのを提出したのですが、入門番号は7番位でした。
  • 小林師範の魅力とは何でしょうか?
  • やさしく親切な御性格で、「合気道の普及」に一路邁進しておられることでしょう。
  • 畑山師範に初めてお会いしたのはいつ頃なのでしょうか?
  • 私が小林道場にお世話になった時と前後して、畑山師範も内弟子になられたので、その頃お会いしています。
  • 畑山師範を小林道場で内弟子をしていた頃からご存知だそうですが、どのような「内弟子」であったのでしょうか?
  • ずっと昔のことであり、又すぐドイツに行かれたりしたので、あまり良く覚えていません(笑)
  • 畑山師範の魅力は何でしょうか?
  • やさしく親切なところでしょう。小林先生の行き方を、一番良くフォローしていらっしゃる師範だと思います。
  • 板橋六段は日本国内だけでなく、海外へも「合気道の旅」をなさるそうですが、(2002年にはアメリカの講習会にご参加)海外での合気道体験についてのお話をお聞かせ願えませんでしょうか?
  • 今まで、どれ位の国をお訪ねになったのでしょうか?
  • 10ヶ国ぐらいでしょうか。(合気道関連訪問の国の数という意味です)
  • 訪ねていった先生はどなたでしょうか?
  • いろいろいらっしゃるので、特定の方を申し上げる事はできません。
  • 今後訪ねてみたい先生はいらっしゃいますでしょうか?
  • 会えるなら、皆さんにお会いしたいです。
  • エピソード等ございましたら、お聞かせ願いますか。特にはありません
  • 諸外国の方々の"合気道観"はどのようなものなのでしょうか?日本人と似ている点、違う点はございますか?
  • 基本的には、外国人だからといって、日本人と違っている事はありません。むしろ、驚くほど眞面目に合気道の事を考えている人は、外国の人に多く見受けられます。
  • 今まで沢山の「合気道人」とお会いになってきたと思いますが、その中で、"忘れられない凄い人"、"忘れられない達人"、"もう一度会いたい合気道人"といった類の方はいらっしゃいますでしょうか?
  • 特にありません。みんながそれぞれ個性を持って、眞面目に合気道に取り組んでおられる方々ばかりでした。
  • 日本古来の解釈では気とはカミが、人間の世に降りてきた状 態を気(き)、または気(け→多くは祟りをもたらすものを指す)といいますが、このような言い回しは合気道の文献に時々登場する表現ですが、この気という も板橋六段の「気」についての解釈をお聞きしてもよろしいでしょうか?
  • 私は、そういう神がかった、または抽象的な云いまわしが大嫌いなので、なるべく口に出さないようにしています。強いて云えば、「やる気がない。」「やる気を出す。」とか、「あいつ、やる気だな。」等というような様態の中に、共通して存在している気持ちでしょう。
  • 合気道は肉体だけでなく、精神面での修養も必要という話を本等で見ることがありますが、板橋六段はそういった精神修養のために、なにか行っていらっしゃるのでしょうか?
  • 何もありません。合気道の為に精神修養するのではなく、合気道の稽古によって精神修養するということでしょう。
  • お若いときと、お年を召された現在では合気道のあり方、体の使い方などは変化なさったのでしょうか
  • 体力の劣化のため、体の使い方は当然変わってきていると思います。しかし意識して変えているということはなく、自然に反応しているだけでしょう。
  • 指導をなさっている時に、どんな点に気をつけていらっしゃるのですか?
  • 先づ、怪我のないように、が第一です。その次にどう動けば一番自然なのか、と自ら気付くようにもっと行うということです。
  • 板橋指導員は、大変お体が柔らかく、拝見していて年齢を感じることがありません、また怪我をなさった等の話を聞くこともありません。健康法等についてお聞かせ願いますか?
  • 特別な体操などを行っているのでしょうか?
  • 何もやっていません、むしろ合気道をやっているので、他のスポーツ(スキーやゴルフ)に役立っているのではないかと思います。
  • 健康そのものでいらっしゃる板橋六段の健康法のようなものはございますか?
  • 特にありません。要するに無理をしないことです。
  • 合気道をなさっていることについて、ご家族はどのように仰っているのですか?
  • 何も云いませんが、厭な顔もしないから、容認しているのでしょう。
  • 合気道によって切り抜けた「ピンチ」や「ハプニング」はありますか?
  • ありません。
  • 現在は男女の稽古生の比率はほぼ5:5というところですが、女性が道場に登場し始めたのはいつごろなのでしょうか?
  • 比率はよくわかりませんが、合気道が世の中に広がり始めた最初から、女性の参加は多かったと思います。
  • 合気道によって得たものはございますか?
  • というより、合気道を続けていなかったら、現在の私の人格は、もっと違ったものになっていただろうと思います。
  • 合気道関係または武道関係の本で、おすすめの本はございますか?
  • 特定の本はありません。武道関係の本は、ダンスなどと同じで、本を見て何か新しい事が出来る、というものではなく、時々振り返って確かめる役にしかなりません。
  • 武術関係で気になる最近のニュース・人物などはございますか?
  • 特にありません。
  • 合気道関連質問の最後に、杖・剣術について、未熟な私にアドバイスを頂戴できますか
  • 基本の反復練習に尽きます。

質問と答え(ご趣味等について)

  • 板橋六段は、本を読むことが大変お好きだそうですが、本についてお聞きしてもよろしいでしょうか。その中で一番多く読むのはどれなのでしょうか?
  • 小説・随筆
  • 特にこの分野が一番多いと思います。ストーリィもさることながら、歴史も哲学も全部この中につまっています。 (程度はいろいろありますが)
  • その他
  • 手当たり次第、ジャンルなどというものはなく、その時々に手の届く範囲で、読んでいるだけです。
  • 合気道以外でお得意のスポーツはございますか?
  • スキーと登山(と云っても最近では、ハイキングになっていますが)
  • どのようなお仕事をなさっていたのか、お聞かせ願いませんでしょうか?
  • 機械工学関係の技術者として、民間企業の一社に40年勤めましたが、20回くらい変わったでしょうか、さらに外国駐在も含めると簡單に、説明できません。
  • 山登りがご趣味と聞きましたが、今までご登頂なさった山を教えていただけますでしょうか
  • 「山高きが故に尊しとからず」をモットーにしていますので、無数です。
  • そのなかで一番印象に残っている山、気に入っている山はございますか?
  • 宮城県の蔵王山です。私の登山歴はここから始まりました。
  • お気に入りの「街」はどちらですか?
  • 仙台
  • 板橋六段は「引退した盲導犬」を引き取るというボランティア活動にご参加、取り組み様は合宿の最中、「飼っている犬の体調が悪い」と緊急にお帰りになるなど、真剣そのものですが、そのことについてお聞かせ願えませんでしょうか
  • いつごろからそのボランティアをはじめられたのでしょうか?
  • 7年前(アメリカから帰国したとき)からです。
  • きっかけは何だったのでしょうか?
  • もともと犬は好きだから飼いたい。しかし自分達の年齢を考えると、若い犬は飼えない。自分達より相対的に年寄りの犬でなくてはならない。それならば、退役犬が相応しいのではないか。多少なりとも、社会へのお役にも立てることだし。と考えた次第です。
  • 現在は何頭ほどの犬とお住まいになっているのでしょうか?
  • 退役犬2頭と、迷い犬1頭の3頭と暮らしています。
  • 私個人が食道楽なための個人的?質問なのですが地元の「おいしい味」というのがありましたらお聞かせ願いませんでしょうか? (板橋六段がせんべいをよく食べてらっしゃると聞いたもので)
  • 美味しい、美味しくない、は本来「自分のコ ンディションと主観」で決まるものと思います。味も「一期一会」だと思います。従って、TVや雑誌などで「うまいもの」が氾濫している状況には、いささか 不快を感じます。せんべいについては、別にこだわりはないが、味億(埼玉県狭山市)のせんべいは、たまたま食べたら、おいしかったな、という丈の話です。
  • お好きな映画作品、俳優さんはございますか?
  • 映画作品:西部劇、俳優:ヘンリィ・フォンダ
  • お好きなTV番組などはございますか?
  • 特にありません質問以上です。

注釈

注意:(旧字体「斈=学:がく」「單・たん」を板橋六段の文章の雰囲気を 皆様にそのままお伝えする為に、そのままとしています)

編集後記

合気道研心会の本部道場、狭山台道場には「とげとげした雰囲気」がない。みな合気の道を追求せんと謙虚であるし、ともに語れば家族のようだ。「ここ で飲む本当にお酒はおいしい、生まれて初めてこんなに飲んだ」と、ある方がいった。そのような雰囲気は何だろうと明らかにしてみれば、「社会的地位があろ うと、なかろうと老いも若きも、みな合気道人」という何らかの意識があるからなのだと思う。その雰囲気の中心にあるのが板橋六段、参段合格の目黒さんであ るかと思う。両お方ともに「雲の上の方」なのである。
板橋六段は某媒体にインタビューご出演している。以前、機会があって「板橋ご老公様は一体・・・」とお聞きしたところ腰を抜かした、ご老公という言葉に ふさわしい基礎があった。だが、そこをひけらかすでもなく、こだわることなく。稽古後は穏やかな表情でお茶をすすり、お茶菓子を静々と食していらっしゃ る。板橋六段は、大様(おおよう・余裕があり寛大な様)な表情でそこに在る。まさにこれこそが人生の達人たるお姿である。おおよそ凡人には真似できまい。 というわけで、道場にくる人は皆、誰に教えられたのでもなく「ここで社会的地位をひけらかすのは野暮だな」ということになるのである。

狭山台道場の稽古終了後「お茶の時間」、がある。稽古のあとは"喉が乾くだろう"と畑山師範のお心で、稽古生は輪になってお茶を飲む事ができる。あ る日の土曜稽古後、当時学生だった私は、危なっかしく?茶碗にお茶を注いでいると、板橋六段が、孫に語りかけるように、仰った。「お茶はね、茶碗に少しづ つ順番に注ぐのね、そうするとお茶の濃さが皆同じになって、皆おいしいんだよ」と。普通なら「その年になってお茶の入れ方もしらんのかー」と言われても仕 方がないところ。私は家庭でお茶を飲む事などない自動販売機世代の、所謂「現代っ子」ってやつだ。当然親にもお茶を入れたこともない(苦笑)、先生あの時 はお手数おかけしました。
六段が、時々お茶を入れている光景を見る。その様子を見ると、「合気道をともに考えてくれた、皆に感謝の心がお茶一杯にこもる方法」を教えてくださった、ということなのかと思う。それを皆が和やかな表情で飲む。板橋六段の「心」を見るひと時である。

この板橋六段の原稿のなかで以下のような事を仰っていたのではないか。私はそのように感じた。「他人の真似じゃいけない。自らの体に聞いたらいい、 何か(特別な裏技)があるとおもっちゃいけない、あると思う気持ちが、袋小路にはまっていく原因となる。なにもかも自らの体が知っているんですよ。信じな さい」と先生の原稿は私に静かに語りかけてくれるかのようだった。原稿は年内、12月23日(祝・火)に頂戴した。手元に届き次第、すぐに拝読した。

板橋六段の合気道は、見上げるばかりの体の大きい人、孫ほどの若者を相手にしても、有効だ。板橋六段に技を極められ、「若いもんが、降参している光 景」もある。とはいうものの、板橋六段は、見上げるような巨体というわけでもなく、どちらかというと地元の敬老会に出席していても、ちっとも違和感がない 感じだ。
”どうして有効なんだろう?先生には何かとてつもない秘密があるんだろう”と私は虎視眈々と先生を眺めていた。故に、今回そのような質問を多くしてしまったのは陳腐な思い込みが私の深くあったからだろう。
結局、板橋六段の貴重なお時間を「私の思い込み」にお付き合いさせてしまった。にもかかわらず、先生は20数枚におもよぶ、質問にきちんと答えてくださった。本当になんとお礼を申し上げたらよいものか。心よりお礼申し上げて終いと致します。